2018年7月27日金曜日

【学問のミカタ】就職活動ではなく「入社活動」を!

キャリアデザインプログラム運営委員の小山健太です。私の専門がキャリア心理学、組織心理学ということもあり、キャリアデザインプログラムとして最初の「学問のミカタ」を私が担当することになりました。

さて、日本では多くの場合、「就職活動」ができません。

こう聞くと、高校生の皆さんや、就職活動にまだ取り組んでない大学生の皆さんは、驚くかもしれません。
でも、このメッセージは、私が担当しているキャリアデザインプログラムの授業「キャリアデザイン・ワークショップI」で必ず伝えている内容です。どういうことか、今回のブログで簡単にご紹介します。

まず、世界で一般的な採用方式は「ジョブ型」です。これは、個別のジョブ(職務)を前提に、そのジョブに必要な知識や能力を既に備えている人材を採用するというアプローチです。いわば適材適所の採用方法で、採用後も個別のジョブの範囲内で働くことになります(職務限定採用)。(参考図書:濱口桂一郎(2013)『若者と労働』中央公論新社)

「就職活動」は、英語ではjob hunting や job search などと表現されます。つまり、「ジョブに就く活動」ということです。ですから、就職活動とはジョブ型雇用のもとで必要となる活動なのです。

キャリアデザインプログラムでは、幅広い専門性を学習し、
また実践的なスキルを身につけられる機会がたくさんあります。

一方で、日本企業の場合はどうでしょうか。

多くの皆さんは、大学卒業後に企業で「正社員」として働くことを希望していると思います。この「正社員」という考え方は日本独特のものと言って差し支えないでしょう。

これまで多くの日本企業が、学卒者を「正社員」として採用し、長期的な雇用を(暗黙に)保障することによって、企業内で長期間育成するというアプローチをとってきました。
毎年一回、4月1日に多くの学卒者が正社員として入社する仕組みを「新卒一括採用」と呼びますが、これもまた日本独特のシステムで、現在でも多くの日本企業で取り組まれています。

新卒一括採用で入社した正社員は、様々な仕事を通じて、広範囲の知識・スキルを学習していくことが期待されています。企業の新卒採用ホームページを見ると、募集職種の表記が「事務系」や「技術系」などとなっていることがほとんどです。これは、企業内にたくさんある仕事を大ぐくりに区分し、あえて個別のジョブ(職務)を限定せずに採用しているということなのです。

このような入社型の採用方式をとっている日本企業の強みは「現場力」だと、私は考えています。石田英夫先生の著書『日本企業の国際人事管理』では、日本企業を他国の組織と比べて次のように説明しています。
「・・・末端の労働者を比べると、日本のほうが強いということになる。つまり、有能でやる気も旺盛な日本の労働者が、組織の情報を豊富に共有し、組織目標への貢献意欲をもちながら、自ら「考える」仕事ぶりによって、職場の問題解決に比較的大きな発言権を行使しており・・・ 」
(出所:石田英夫(1985) 『日本企業の国際人事管理』日本労働協会、p19)

つまり、日本企業の正社員には、あえて個別具体的な職務を限定せずに自ら考える余地を残すことで、全社的な視点をもちつつ、様々な専門能力を自ら学び、仕事において創意工夫することが期待されているのです。

このように、日本企業における採用方法は、世界で一般的なジョブ型とはまったく異なるのです。先ほどの濱口先生の著書『若者と労働』では、日本の採用方法を「入社型(メンバーシップ型)」と説明しています。つまり、新卒一括採用で「正社員」として入社し、入社後に様々な仕事を経験することによって成長していくことが求められるのです。
(日本企業がこのような世界的にみて独特な採用方式に至った歴史的経緯は、また別の機会で説明することにします)

それでは、「入社活動」では、企業側はどのような点を重視して採用をしているのでしょうか。

リクルートキャリア就職みらい研究所の『就職白書2018』によれば、「企業が採用基準で重視する項目」の1位は「人柄」、2位は「自社への熱意」、3位は「今後の可能性」です。この調査からも、多くの日本企業が、若手人材に、個別の専門スキルではなく全人的な素養(そのなかでも「様々な専門性を学ぶ姿勢」が特に重要だと私は考えています)や、入社後の成長、個別のジョブではなく全社的視点を期待していることがわかります。

ただし、これからの時代の「入社活動」は、1つの会社に自分の一生を捧げることを意味するわけではありません。今後は、長いライフキャリアのなかで転職(これも日本の場合、実際には「転社」です)を経験する人も増えると思います。その場合でも、やはり転職先の新しい組織において、全社的な視点をもち、新しい専門能力を自ら学び、創意工夫することが求められる場合が多いのです。

今回の「学問のミカタ」では、日本企業に特有の「入社活動」についてご紹介しました。
キャリアデザインプログラムでは、1年次に東経大4学部の入門科目を学習し、2年生以降は各学部の専門科目を幅広く学べる「クラスター」という制度があります。また、実践的なスキル・能力を身につけられるプロジェクト活動(グループワーク)の機会も多くあります。こうしたプロセスを通じて、専門性を幅広く学ぶ力を養い、日本企業に入社してから広い視野をもって創意工夫できる人材に育ってほしいと願っています。


【学問のミカタ】
東京経済大学では、各学部で高校生向けに分かり易く専門分野の教員がブログを公開しています。ぜひご覧ください

経済学部ブログ「復興支援の経済学
経営学部ブログ「Amazonが覆しつつある常識・・・
コミュニケーション学部ブログ「アスリートは勝負をどう学ぶのか
現代法学部ブログ「裁判員って何をするの?
センター日記「ドイツの政治教育

2018年7月4日水曜日

課外活動で成長しよう!

梅雨も明け、毎日暑い日が続きますね。
サッカー・ワールドカップもあって
寝不足や夏バテをしていませんか。
新年度が始まって、3か月が過ぎました。
1年生も大学生活に慣れて、
部活・サークル、アルバイトで人間関係が広がり、
「だいがくせ~い!」を実感している人もいるのでは。

さて、突然、話は変わってキャリアデザインプログラム(CDP)が実施した
イベントをひとつ紹介します。

5月30日水曜日。
キャリアデザインプログラム(CDP)は、1年生を対象に
セミナー&ワークショップ『CDP with Google Womenwill』を開催しました。
テーマは《AI時代を生き抜くキャリアデザイン》。

このセミナー&ワークショップは、
「女性が直面するさまざまな問題を、
テクノロジーによって解決を目指す、
Googleのアジア太平洋地域全体での取り組み」
『Womenwill』の活動に賛同した東京経済大学が、
2017年にスタートしたキャリアデザインプログラム(CDP)の
課外活動の一環としてはじめた、今年で2回目のイベント。



通常の学部教育とは別に4年間を通じワークショップで
「自分の人生」や「キャリア」をみんなで考えるというのも
キャリアデザインプログラム(CDP)の特徴。
そのスタート・イベントです。

内容もさることながら、
お伝えしたいのは
学年を越えた学生の縦の繋がりの強さです
(とは言ってもまだ2期目ですが…)。



昨年の5月、このGoogleセミナー&ワークショップのあと、
1期生は有志による学生団体「TKU Unlimited」を設立。
10月には「働き方改革を考えるシンポジウム」を主催し、成功させました。
彼らの1期生としての団結心と2期生へ思いがなければ
今年のこのイベントも成功しませんでした。

何日も前からUnlimitedの1期生たちは、
1年生と一緒に取り組むワークショップを企画。
当日も1年生のグループにファシリテーターとして加わり、
1年生の学びを支えてくれました。


また今回のテーマにちなんで
学生たちのグループ発表にGoogleのテクノロジー「Google ドライブ」を利用。
これは驚きの技術です。

たとえば資料作成過程を何人もがPCを通じて
同時に共有できるというもの。
ひとつのシートを場所と時間を超越して
みんなで手を加えることができる優れものです。

サークルやアルバイトで忙しい学生も、
グループワークのために特定の場所に集まる必要がなくなります。
場所と時間を越えて「知」を共有し創造できる技術です。
いよいよテクノロジーは近代を越えてきました。
「ポストモダン」です。
そんなテクノロジーに大学初年度から触れられる学生が
とてもうらやましく思います。

さてCDPの1期生と2期生は
8月1日(水)と2日(木)
そして8月25日(土)と26日(日)の
オープンキャンパスのワークショップ体験で高校生の皆さんをお待ちしています。

またUnlimitedの活動としては
8月29日(水)に
発展途上国の少女の早期婚や望まぬ妊娠という視点から
女性の自立や自律、そしてキャリア形成を考える
映画「ソニータ」の上映会。

10月13日(土)は
『AI時代を生き抜くキャリアデザイン』をテーマとしたシンポジウム。
成功に向けて学生たちは準備を重ねています。

課外活動を通じて成長する
東京経済大学キャリアデザインプログラム生の
発信力を多くの方々、高校生に知っていただきたいものです。
2期生もなかなかのものです。成長が楽しみです。

さぁ、そろそろいつもの通り、学生から声が聞こえてきます。
「先生!話が長いっ!」

それは失礼しました。
以上、6号館2階、学習センターより特命講師の新井がお伝えしました。